ブリティッシュ・コロンビア州 
ネヤーン・フォールズ・パークにて

Live In Canada
カナダに住む

塾の講師から留学サポート業に転身
藤原美信(ふじわら よしのぶ)さん
大阪市出身

少年リーグの野球の試合。広いグラウンドでどこまでも続く青い空を仰ぎながら、高いフライをキャッチする少年に「グッド・ジョブ!(良くやった)」と親から大きな声がかかる。カナダの親はよく子どもをほめる。時々ほめすぎではと思えることもあるが、それがカナダ流と理解できるようになった。藤原さんは10歳になる次男、銀次郎(ぎんじろう)君が所属する少年野球チームのアシスタント・コーチを務めている。この夏チームは、地元の地区での優勝を経て初めてブリティッシュ・コロンビアの州大会に出場して5位の成績を残した。選手や藤原さんにとって思い出深い夏となった。

藤原さん家族がカナダに移り住んで今年が10年目にあたる。藤原さんは日本で、「子どもたちが実験を通して科学を学べるように」と父親の創立した「藤原学園実験教育研究所」で講師を務めていた。子どもの前に立つ経験を積むほどに、上手に楽しく教えることに意欲を燃やした。子どもたちに慕われながら、彼らの成長ぶりを見つめられる仕事に、日々やりがいを感じながら精力的に指導にあたっていた。

1979年の夏、休暇に沖縄を旅しようと大阪から乗り込んだ船中で、近くにいた外国人に英語で話しかけたことがきっかけとなって、海外渡航へのあこがれが募り、同じ年にカナダにいる親戚を訪ねた。2ヵ月弱の滞在中に味わったサーモンのバーベキューの味と雄大な自然が忘れられず、翌年、ブリティッシュ・コロンビア大学付属の語学学校に留学。同じ学校に留学していた縁(ゆかり)さんと出会った。3年間の留学を終えた後で、日本に帰国して縁さんと結婚。その数年後、縁さんは会社から1年間のニューヨーク研修の辞令を受けた。その頃、塾に英語部を立ち上げようと考えていた藤原さんは、縁さんの海外研修を好機ととらえて一緒にニューヨークへ渡った。アメリカでは語学学校に通いながら、その学校の日本語教師の助手を務めるかたわら、周辺の語学学校の授業内容をリサーチして周った。帰国後は塾で再び生徒の指導にあたりながら、日本語教師の養成学校にも通ったが、成績が最優秀だったことから、その学校で日本語教師として雇われ、二束のわらじを履くことになった。

藤原さんの生活はとても忙しかったが、どちらも楽しかったので大変と感じることはなかった。
しかし、まじめな生徒がいじめられるような日本の現状を考え、子どもたちの人間性が損なわれてしまうのではと不安を感じていた。こうしたなかで長男美太郎君が生まれ、わが子を良い環境のなかで育てたい思いが募ってきた。
もとより藤原さんは好奇心が強く、勝海舟や坂本竜馬のように常に「心は太平洋の向こう」に向けられていた。そこで塾の海外教室を開くことでカナダのワーク・ビザを得て、思い切って家族でカナダに渡った。

藤原さんは数年前より、日本からの留学のサポート業を始めた。日本の学生にカナダの良さを知ってもらい、同時に彼らの助けになるためだ。
周りの子どもを通して、また地域の学校を訪問しながら、カナダの子どもは子どもらしく、笑顔が多いことを感じる。それは社会や学習環境のなかに余計なプレッシャーが少ないためだと藤原さんは捉えている 。

日本の塾で講師だった時には、学習内容が子どもの関心のない単元に入るとやむなく、「普段は使わないことでも、これを学ぶことで脳を鍛えているんだ」と話すこともあったが、カナダの学校教育を見ていると、実践に即した内容が多く盛り込まれている。
特に低学年ではパズルを解くように算数に取り組ませたり、一見遊びと思えるような内容から学習に入ることが多いため、カナダの生徒は身構えせずに学んでいるようだ。
カナダでは押し付けではなく子どもの自発性を重視した方針が取られている。

またカナダの高校には選択科目が多いことを藤原さんは高く評価している。
「好きなことなら寝食を忘れて取り組める。それだからうまくもなる」。
ハリウッド・ノースとも言われるバンクーバーは映画の制作が数多く行われるところだ。そのため選択科目に演劇クラスのある高校も多い。しかも実際に映画を作る実習が豊富なことや、演技や舞台演出などクラスが多岐にわたり、魅力的な授業が生徒たちをひきつけている。

留学生にはこうしたカナダの教育を体験してもらい、「カナダの良いところを取り入れて日本を浄化してほしい」と藤原さんは願っている。先日、留学生の父兄から、「留学する子をもつ親にとって、心配なのは子どもを送り出した後の現地での生活。だから現地できちんと面倒を見てくれるエージェントはありがたい」と書かれた手紙を受け取った。藤原さん自身、親であり、留学経験もある。そのため親と留学生の抱える不安が良く分かり、親身になってサポートをしていきたいという思いは人一倍だ。またトラブルが発生した折には、学校やホスト・ファミリーと交渉してくれる人の存在が重要であるが、その点においても、現地の学校と日ごろ交流を深めている藤原さんは留学生の心強い味方となっている。

ブリティッシュ・コロンビア大学内の新渡戸ガーデンにて

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